面白いゲームをチームで作るために意識していたこと

1. はじめに

専門学校でゲームプログラミングを学んでいるモルモです。
今回は「ゲームクリエイターズ甲子園2024」でドリコム賞を受賞した『ソウルラッシュ』の制作で、ディレクターとして意識していたことを紹介します。

これが、初めての長期制作でのディレクター経験でした。
同じように学生でチーム制作をしている方の参考になれば嬉しいです。
もしプロのクリエイターの方がご覧になっていたら、ぜひご意見をいただければ幸いです。


2. 背景

チーム構成

メンバーは16名。内訳は以下の通りです。

  • ディレクター:1名
  • プランナー :1名
  • プログラマー:6名
  • デザイナー :5名
  • サウンド  :2名
  • 声優    :1名

同じ専門学校のメンバーで、学内のゲーム制作サークルに所属していました。

制作条件

  • 期間:8か月(3月〜10月)
  • 目的:TGS(東京ゲームショウ)の学内ブースに出展する作品を制作

学校側からは以下の要件が提示されていました。

  • 子供から大人まで遊べること
  • プレイ時間は5〜10分程度
  • 技術的な「凄さ」が伝わること

3. 意識していたこと

結論から言うと、「良いコンセプトを考え、それを軸に制作すること」です。
以下では、良いコンセプトとは何か、なぜそれを軸にするのかを説明します。

3-1. コンセプトは「どんな感情をどう伝えるか」を言語化する

良いコンセプトとは、
「プレイヤーがどんな感情を抱くのか」
「その感情をどうやって伝えるのか」
を明確に説明できるものだと考えています。

これは現役ディレクターの方から学んだことです。これが言語化できていないと、ゲームの魅力が曖昧になってしまいます。だからこそ、開発を始める前にしっかり考えることが大切です。

私は自分で原案を作り、講師や友人にフィードバックをもらい、多くの視点から「面白い」と思えるかを確認したうえで制作に入りました。

『ソウルラッシュ』のコンセプトは、「敵を殲滅する爽快感」 です。
この言葉を聞いて、どんなイメージが浮かんだでしょうか?

  • 目の前に迫りくる軍勢を一気に薙ぎ払う
  • 複数の敵に囲まれた主人公が、一閃で切り伏せる

いずれも「無敵感」や「カッコよさ」を伴った爽快さ(どんな感情を抱くか)を連想できると思います。
また「敵を殲滅すること」でそれを感じられることも伝わったと思います。

限られた時間の中で派手さや爽快感を感じさせつつ、技術的にも見応えのあるゲームにするにはどうすればいいか。
その検証と試行錯誤の末に、『ソウルラッシュ』が生まれました。

3-2. アイデアはコンセプトを軸に決める(多数決はしない)

良いコンセプトが定まれば、それを体現するアイデアを積み重ねることで面白いゲームに近づきます。
そのためには、チーム全員が常にコンセプトを意識することが欠かせません。

コンセプトが明確だと、メンバーは「どんなアイデアなら合うか」を考えやすくなり、自然と方向性も揃っていきます。

学生制作では迷ったときに多数決に頼りがちですが、これは避けるべきだと思います。
必ずディレクターが 「コンセプトに合っているかどうか」 を基準に決めるべきです。


4. 得られた学び

コンセプトがあったおかげでできたこと

とにかく決断が早くなりました。
上がってきたアイデアを「コンセプトに合うか/合わないか」で判断できるので迷いません。
判断に困る場合でも、実際に試して「プラスになるかどうか」を確認すれば十分です。

実際の判断例

  • ステージを昼にするか夜にするか?
     → 夜にして弾を光らせることで派手さが増し、殲滅感が強調される → 採用

  • ダメージ計算式を複雑にしてやり込み要素を出すか?
     → TGSでの短時間プレイでは効果が薄いと判断 → 不採用

逆にもっと工夫できたと思う点

今回のコンセプトは分かりやすく、既に検証済みの「爽快感」だったため、オリジナリティには欠けたかもしれません。
参考にした『ヴァンサバ』がヒットしていたこともあり、ほぼ間違いのない方向性ではありましたが、差別化は限定的でした。

ただし「奥行きのあるランゲーム」とミックスさせたことで、ある程度の独自性は出せたと考えています。


5. まとめ

ポイントのおさらい

  • コンセプトは「プレイヤーがどんな感情を抱くか」と「どう伝えるか」を言語化すること
  • 決定は多数決ではなく、コンセプトを基準に判断すること

これから挑戦する人へ

チーム制作では、ここで書いた「面白さづくり」以外にも課題は山ほどあります。

  • 人員が足りない
  • メンバーのモチベーションが落ちる
  • フィードバックでボコボコにされて自信をなくす

大変なことばかりですが、それを乗り越えて完成し、人から評価されたときの喜びは計り知れません。

これから挑戦するみなさんを、心から応援しています!